相続には、法律上様々な手続が定めらています。相続が開始する(故人が亡くなる)と、まずは通夜や葬儀ですが、その後、具体的に各種手続きの判断をしていくことになります。期限の定められた手続きもあり、期限内に手続を行わないと不利益を被る場合があります。
以下、相続開始から申告・名義変更までを順を追ってご紹介していきます。
遺言書の有無を確認 | |||||||
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(遺言書が無い場合) | (遺言書が有る場合) | ||||||
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↓ | 遺言書の検認・開封 | ||||||
↓ | 家庭裁判所に申立(公正証書遺言の場合は検認手続不要) | ||||||
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相続財産の把握 | |||||||
↓ | (相続財産リストの作成) | ||||||
相続放棄等 | ↓ | 生命保険金等の請求・年金等の停止 | |||||
(3ヶ月以内) | ↓ | ||||||
↓ | 相続財産の概算総額算定 | ||||||
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相続人の特定 | |||||||
↓ | 被相続人の出生から死亡までの戸籍や | ||||||
所得税の準確定申告 | ↓ | 除籍謄本取得 | |||||
(4ヶ月以内、必要な方のみ) | ↓ | ||||||
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相続人全員の合意 | 遺産分割協議書作成 | ||||||
↓ | 不成立の場合は家庭裁判所の調停・審判 | ||||||
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↓ | 相続税の申告・納付 | ||||||
↓ | 10ヶ月以内 (必要な方のみ) (税務署) | ||||||
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各財産の名義変更 | (法務局・金融機関等) | ||||||
遺言は故人の最後の意思表示です。ですから最も尊重されるべきものですので、まずは、遺言書が有るかどうかを確認して下さい。故人が遺言書を誰かに預けていたり、容易に見つけることができるような場所に保管していたりしますので、保管していそうな場所や、遺言書を預けていたかもしれない知人や専門家(特に故人が亡くなったことを未だ知らない人)に聞いてみて下さい。
もし、遺言書らしきものが見つかったならば、絶対にご自分で開封しないでください。
ただし、公正証書遺言はこの限りではありませんので、公正証書遺言かどうか判別がつかないときは、家庭裁判所や司法書士等の専門家に確認して下さい。
公正証書遺言以外の遺言書であった場合、遺言書の保管者またはそれを発見した相続人は、故人の死亡を知った後、直ちに、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、「遺言書の検認」という手続を申請しなければなりません。
家庭裁判所は、遺言書の検認の申請があると、相続人全員に呼出状を発送し、相続人立会いのもとで遺言書を開封します。もし、遺言書に封印がしてあったならば、これにより、遺言者以外の手による改ざんを防止することができます。
なお、家庭裁判所による遺言書の検認手続きは、遺言書が法定の形式を備えているかどうかを形式的に審査するもので、遺言書の内容やその有効性を認めるものではありません。
検認手続には、遺言者の戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
マイナス財産(借金など)がプラス財産を上回るときなどで行える相続放棄等は、故人が亡くなったことを知ってから原則3ヵ月以内に申出をする必要があります。また、相続税がかかる場合には、原則10ヵ月以内に申告をしなければなりません。
相続放棄等をするかしないか、相続税申告の必要性を判断をするためにも、できるだけ早く・正確に相続財産を把握する必要があります。
相続放棄等につきましては、後述の「4.相続放棄は3ヵ月以内に」をご覧下さい。
以下は、相続税がかかる財産についてご紹介します。
原則として、相続や遺贈(遺言書によって贈与する旨記載された財産)により取得した財産が対象です。死亡退職金や死亡保険金等も、相続や遺贈により取得した財産とみなされます。
個人が財産をリストアップしていたり、遺言書を残していても、個人が失念している財産や負債があることも考えられます。
専門家に相続に伴う財産の調査を依頼しても、自宅に保管してある不動産の権利証や、預貯金・株券の証書などは、全て相続人が調べなくてはなりません。
種類 | 把握方法 |
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預貯金・生命保険金・有価証券 | 通帳・証書 |
死亡退職金・功労金(現役で働いていた場合) | 企業からの連絡 |
事業用設備・器具、不動産収入、事業用借入金残高、貸付金、売掛金(個人事業をしていた場合) | 通帳・経理担当者の記録等、 顧問税理士への確認 |
不動産 | 権利証・登記簿謄本・固定資産税の納付請求書・固定資産名寄帳 |
生前贈与財産(相続開始の3年以内に贈与した財産) | 贈与の資料(贈与契約書等)・申告書 |
ゴルフ会員権や高価な美術品類 | 会員権証・鑑定書 |
相続が開始すると、預金や不動産などのプラスの財産とともに、借金などのマイナスの財産や、保証人としての責任といった保証人としての地位までも相続することになります。
多額の借金が残されていたり、多大な保証債務を負うといったケースでは、相続をしないという選択肢をとる方法があります。これを「相続放棄」といいます。ただし、相続放棄は、マイナス財産や保証人としての地位だけでなく、プラス財産も相続できなくなります。法律的には、相続放棄をしたものは、初めから相続人でなかったものとして扱われます。
相続放棄をするためには、相続人が被相続人(故人)の死亡を知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申出をしなければなりません。
相続放棄のほかに、故人が残したプラス財産の範囲で債務の支払いをする「限定承認」という選択肢をとる方法もあります。この限定承認は、法定相続人全員の同意のうえで、相続放棄と同様に、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申出をしなければなりません。
いずれの手続も、3ヶ月以内に申請しなければ、相続人は被相続人に代わって借金を返済しなければならなくなりますが、やむを得ない事情がある場合は、「3ヶ月」の期限の延長を申し出ることができる場合があります。
ある人(被相続人といいます)が死亡したからといって、肉親が全員相続人になるわけではありません。
遺言があれば、そこで指名された人が相続人になりますが、遺言が無い場合は、法律に基づいて相続人が決まります。この相続人を「法定相続人」といいます。その範囲は、配偶者・子・直系尊属(父母や祖父母)・兄弟姉妹などです。配偶者は常に相続人になります。
以下に現在の法律に基づく法定相続人の範囲をご紹介します。
なお、法定相続人の範囲を定めた民法は、過去に数回改正されております。基本的に被相続人が亡くなった時点の法律が適用されますので、亡くなられてから長期間を経過しているような場合は注意が必要です。下記はあくまで現行の法律に基づくものです。
被相続人に配偶者と子がいる場合は、配偶者と子が相続人となります。被相続人より先に亡くなった子がいる場合は、孫、さらに曾孫というように下におりてゆきます。これを代襲相続といいます。
なお、子が数人いる場合は、亡くなった子について代襲相続が発生します。
被相続人に配偶者がおり、子やその代襲相続人がいない場合は、配偶者と父母が相続人となります。さらに、父母ともに被相続人より先に亡くなっている場合は、上に遡ってゆきます。なお、父母等のうち一方、例えば父が亡くなっている場合は母が相続人となり、父の上には遡りません。あくまで父母等がともに亡くなっている場合にだけ上に遡ることになります。
被相続人に配偶者がおり、子やその子の代襲相続人がおらず、直系尊属(父母、祖父母等)も先に亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。さらに、被相続人より先に亡くなった兄弟姉妹がいる場合は、その亡くなった兄弟姉妹の子(甥姪)が相続人となります(代襲相続)。ただし、被相続人の子の場合と違い、兄弟姉妹の代襲相続は甥姪で打ち切りとなります。
以上、基本的な法定相続人の範囲をご紹介してまいりました。ただ、実際にあてはめてゆくときには、様々な論点が出てまいります。
例えば、一概に子供と言っても、胎児、養子、前婚の子、婚外子をはじめ、家庭裁判所に相続放棄の申立てをした子、相続欠格の子(被相続人や先順位または同順位の相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言への不当な干渉をしたりした子は相続人にはなれません)、相続廃除された子(被相続人は、子などから、虐待を受けたり、重大な侮辱を加えられたりしたときには、家庭裁判所に対し、その子の相続人としての身分を剥奪する申立ができます)など様々です。
相続人が全くいない場合もあります。この場合には、特別な手続を踏んで内縁関係にあった人や療養看護をしていた人に相続財産の一部または全部が与えられることがあります。
ここで全てを掲載しようとしますと本数冊分の量になってしまいますので、ここでは控えさせて頂きます。相続人の特定はすべての基礎となる部分ですので、少しでもご不明な点があるようでしたら、私ども専門家にご相談下さい。
様々な手続をする際には戸籍を集めて提出する必要があります。銀行や法務局等は戸籍によって法定相続人が誰であるのかを確認するからです。
戸籍を集める際は、基本的に、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本と相続人の最新の戸籍を集める必要があります。
戸籍謄本や除籍謄本は、本籍地の役所に申請すれば取得できますが、特に被相続人のものは、結婚や転籍などで本籍地が変わっている場合があり、変わる前後ものも、漏れなく集めなければなりません。
これらの書類を集めるのはご自分でも可能ですが、役所の保管期限が切れていたり、本籍地が点々と変わっている場合が多くみられます。
相続人の特定を間違うと、せっかく遺産分割協議が成立しても、その協議全体が無効になってしまいます。
また、相続の手続きは、相続から時間が経過するにつれて複雑になってしまいますので、お早めに専門家である司法書士にご相談なさることをお勧めします。
相続財産と相続人が特定できたら、相続人全員で相談して、法的に必要な手続を相談します。
まず、被相続人が遺言書を書いていれば、基本的にはその意思を尊重して財産処理を行います。ただし、遺言書のある場合でも、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なった遺産分割を行うことも可能です。法定相続人以外に遺言執行者や受贈者(遺言で財産を贈与された人)がいる場合は、これらの者の同意も必要となります。
遺言書が無い場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議を行う場合、基準となるのが、次に説明する「法定相続分」です。
法定相続分とは、法的に遺産分配の割合を定めたものです。ただし、相続人全員で合意すれば、法定相続分と異なる分配をしても問題ありません。
配偶者 →2分の1
子 →2分の1
なお、子が数人いる場合は2分の1を子で同等に分けることになります。
※平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。法定相続分を定めた民法の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)が削除され、平成25年9月5日以降に開始した相続について適用されます。
嫡出子とは、簡単に言えば、婚姻関係にる男女の間に生まれた子のことで、非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことです。
配偶者 →3分の2
直系尊属→3分の1
配偶者 →4分の3
兄弟姉妹→4分の1
なお、異父兄弟、異母兄弟(半血兄弟)の持分は父母を同一とする兄弟(全血兄弟)の2分の1となります。
寄与分とは、相続人の中に、被相続人(亡くなった方)の財産に特別の貢献(事業を手伝った、財産上の給付をした、被相続人の療養看護をしたなど)をした人がいる場合に、これを無視して相続分を計算することは不公平となることから、その貢献してきた人に、法定相続分に加えて寄与した分を取得させようという制度です。
まず、「相続開始時に有した財産の価額−寄与分」を相続財産とみなして、各法定相続分を計算します。
特別の貢献をした人(寄与者)の相続額は、上記で算出した法定相続分価額に寄与分を加えた額となります。
特別受益とは、相続人の中に、被相続人から特別の利益(開業資金や婚姻時の支度金、住宅購入資金の贈与など)を受けている場合に、これを無視して相続分を計算することは不公平となることから、これを相続分の前渡しとみなして、特別の利益を受けていた人の法定相続分からその分を差し引いた額となります。
まず、「相続開始時に有した財産の価額+特別受益」を相続財産とみなして、各法定相続分を計算します。
特別の利益を受けた人(特別受益者)の相続額は、上記で算出した法定相続分価額から特別受益を差し引いた額となります。
相続人全員で協議をし、話し合いがまとまったら、その分割内容を書面に記載して、相続人全員が署名、捺印(実印)します。この書面を「遺産分割協議書」といいます。
後々の紛争を避けるためにも、相続財産の多少に関わりなく、必ず作成して、相続人各自が保管することをお勧めします。
預貯金の名義変更や不動産の登記にはこの遺産分割協議書が必要となります。
遺産分割協議がまとまらないときは、各相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができます。
ただ、相続税納付の必要がある場合、申告期限が10ヶ月と定められていますので、遺産を分割しない状態で申告納付手続きをしなければならないことがあります。
法律では、一定の相続人に対して最低限の相続分を保証しています。これを「遺留分」といいます。
遺留分の権利者は、配偶者・子・直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の範囲は、相続人が直系尊属のみの場合は全財産の3分の1、その他の場合は2分の1となります。
この遺留分を侵害する内容の遺言でも、相続人全員が合意すれば問題はありません。
ところが、遺留分を侵害される相続人が自分の権利を主張すると、遺言どおりには相続ができなくなります。
  | 請求場所 | 請求・取得するもの |
---|---|---|
金融資産その他の財産について | 銀行、郵便局 | 預貯金等残高証明書 |
証券会社 | 株式等の名義書換請求書 保有資産の残高明細書 |
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債務について | 葬祭費用領収書 医療費や未納税金 |
|
被相続人の資産債務関係書類について | 被相続人の持ち物(自宅等にあるもの) | 預金通帳、不動産の権利証 賃貸借契約書、生命保険証券 自動車検査証、、固定資産税納付書 金銭消費貸借契約書 保証契約書(被相続人が他人の債務の保証人になっている契約書等) |
遺産の種類 | 手続先と手続 | 必要書類 |
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不動産(土地・建物) | 法務局にて所有権移転登記 | (A)(C)(D)(E)(I)(J) |
預貯金、有価証券 | 銀行・郵便局・証券会社にて名義変更 | 預貯金通帳 資産の名義書換請求書 (A)(D)(E)(I)(J) |
生命保険金 | 生命保険会社にて死亡保険金請求 | 保険証券、病院の領収書 生命保険金請求書 最後の保険料、死亡診断書 (A)(D)(J) |
入院保険金 | 生命保険会社にて入院保険金請求 | 保険証券、病院の領収書 入院保険金請求書 最後の保険料 |
高額療養費 | 加入している健康保険 | 高額療養費支給申請書 健康保険被保険者証 医療機関の領収書 被保険者(世帯主)の預金通帳 |
年金(未給付金の請求等)・健康保険 | 住所地の市区町村役場・年金事務所・全国健康保険協会 | 届出書、死亡診断書 年金手帳、被保険者証 埋葬料請求書、火葬証明書写し (D) |
遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金 | 住所地の市区町村役場・年金事務所 | 年金手帳、死亡診断書 課税証明書(又は非課税証明書) (B)(C)(H) |
遺族補償年金(労働者が業務上の事由により死亡した場合) | 労働基準監督署 | 死亡診断書 生計を維持していたことの証明 (F) |
葬祭料、埋葬費 | 住所地の市区町村役場・全国健康保険協会 (2年以内) |
保険者証、葬儀費用の領収書 死亡診断書又は火葬・埋葬許可証 |
死亡退職金、死亡弔慰金(会社勤務中の場合) | 会社(会社の退職金規定を確認して下さい) | 死亡診断書 (A)(D) |
自動車 | 陸運局(廃車や他人に譲渡する場合も一旦相続人名義に変更する必要があります) | 自動車車検証 自動車損害賠償責任保険証書 (A)(C)(D)(E)(I)(J) |
(A)亡くなった方の10歳位から死亡に到るまでの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本 (B)亡くなった方の戸籍謄本 (C)亡くなった方の住民票除票(本籍地記載) (D)財産を相続する方の戸籍謄本 (E)財産を相続する方の住民票(本籍地記載) (F)亡くなった方と受給する方の身分関係を証明できる戸籍謄本 (G)受給する方の住民票 (H)受給する方の住民票(世帯全員) (I)遺産分割協議書 (J)法定相続人全員の印鑑証明書 |
●銀行、信用金庫の預貯金の名義変更には、遺産分割協議書の代わりの専用の届出書がありますので事前に貰っておいて下さい。 ●(A)から(J)の書類は各種手続をする場合、何通か必要ですので、役所に行った時、必要通数を一度に請求しておくと、何度も同じ役所に行く手間が省けます。 ●不動産(土地・建物)の相続登記を司法書士に依頼した場合には、(A)(C)(E)(F)の書類の請求、および遺産分割協議書の作成は全て司法書士にまかせることが出来ます。 |
〒617-0004
京都府向日市鶏冠井町大極殿65-22
TEL : 075-934-0600
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いたします。
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